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  • 投稿カテゴリー:睡眠
  • 投稿の最終変更日:2022年7月27日
睡眠の仕組み

睡眠をコントロールする3つの動き

人の睡眠のメカニズムは「睡眠系」、「覚醒系」、「生体リズム」の3つの協調作用から成り立っています。これらの作用は間脳の視床下部でコントロールされています。

日中は「覚醒系」の働きでオレキシンやヒスタミンなどの覚醒物質が分泌されることで人は仕事や勉強などの活動に集中して取り組むことができます。

一方、人が活動を続けているとアデノシンやプロスタグランジンD2など睡眠物質や疲労物質と呼ばれるものが増加していきます。このような睡眠関連物質の蓄積で「長く起きていると眠くなる」のが「睡眠系」の働きです。睡眠中はこれらの疲労物質や睡眠物質が解消され身体機能の修復やメンテナンスが行われます。

また人間には約24時間から25時間周期の生体周期が備わっています。「夜になると眠くなり朝になると目が覚める」のがメラトニンを中心とした「生体リズム」の働きです。

「睡眠系」、「覚醒系」、「生体リズム」の3つの協調作用がうまくいかなくなると、不眠(眠れない)や過眠(眠い)、起床困難(朝起きれない)といった様々な症状が生じるため注意が必要です。

覚醒系と睡眠系のバランス

「睡眠系」と「覚醒系」のバランスは様々な要因で不安定になることがあります。例えば強い心理的ストレスで昼夜を問わず神経過敏な状態となると「覚醒系」の働きが「睡眠系」を上回り不眠症状を生じることがあります。不安症やうつ病の多くは不眠症を合併しますが、背景にはこのようなストレスを原因とする一部共通の病態があります。

生活習慣の乱れも不眠の原因になることがあります。日中の活動性が低く昼寝の時間が長くなると疲労物質や睡眠物質の蓄積が不十分で夜間の「睡眠系」の働きも弱くなってしまいます。夜間の喫煙やカフェイン摂取、度を越した連続飲酒も「覚醒系」と「睡眠系」のバランスが崩れることで不眠症状の原因となることがあります。

逆に睡眠不足が続くと蓄積した睡眠関連物質が解消されず「睡眠系」の働きが「覚醒系」を上回り「昼も夜も常に眠い」状態となります。またナルコレプシーという過眠症では夜間十分な睡眠をとっても覚醒物質であるオレキシンが十分に産生されないため強い眠気を生じます。その他、睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸が重症化すると夜間の眠りの質が悪化して昼間の眠気が強くなることもあります。

一般に加齢とともに身体機能や脳機能も徐々に衰えていきます。個人差はありますが、高齢になると「睡眠系」の働きも「覚醒系」の働きも低下する傾向があります。日中は「覚醒系」の働きが弱いために「ぼーっとする」ことが多くなり、夜間は「睡眠系」の働きが不十分で眠りが浅くなることがあります。

睡眠リズムの異常

睡眠は「量(長さ)」と「質」だけではなく「リズム」も重要です。人間の細胞や臓器には元来、体内時計を刻む約25時間に近い周期のリズムが存在しています。このリズムは光刺激を含めた外的要因で太陽の周期と同じ24時間に調整されます。毎朝、起床したときに朝陽を浴びると夜間の適切な時間にメラトニンが分泌されて規則正しいリズムで睡眠をとることができます。

例えば太陽の光が届かない洞窟や地下で長期間生活すると、適切な光刺激による調節が機能せずに1日1時間ほど寝る時間と起きる時間が太陽の周期よりも遅れていく傾向が生じます。また夜更かしや長時間の昼寝など不規則な生活が続いたときも「生体リズム」が乱れることがあります。睡眠リズムが後退し、昼夜逆転となると入眠困難(夜間不眠)や起床困難(朝起きれない)あるいは日中の眠気が生じます。

昼夜逆転のようなリズム障害を改善するには光の浴び方と活動のリズムを太陽の周期に合わせることが重要です。起床時間をなるべく日の出に近い時間帯に設定し、起床したら外の光が入る明るい場所で過ごし、日中は長時間の昼寝を避けて活動性を高めるべきでしょう。

一方で夜の光はメラトニンの分泌リズムを遅らせてしまいます。夜間のスマホやTVなど長時間のブルーライト暴露も注意が必要です。そのため夜間は部屋を薄暗く静かな環境にしてリラックスできる状態で適切な時間に眠りやすくなるような工夫が望ましいでしょう。